完全食はいつからあった?完全食の歴史を探る!
「完全食」と聞いて卵や玄米、牛乳などをイメージする方も多いかもしれません。確かに栄養を豊富に含む食材ではありますが、もちろんそれらだけで必要な栄養素を全て摂取することは不可能です。ですので、そうした食材は現在では「準完全食」と呼ばれています。「完全食」とは、これまでになかった”人間が生きるために必要な栄養素の揃った食品”を現代の技術によって実現した食品なのです。
完全食の誕生「ソイレント」
アメリカ人のロブ・ラインハートが「ソイレント」を開発し、現代における完全食の概念を提唱したのは2013年のことでした。それから7年あまりが経ち、今では世界中で様々な完全食が開発されています。完全食は現代社会に生きる私達に食事のあり方を見つめ直す機会をもたらしたと言っても過言ではありません。
完全食が開発されてからまだ数年しか経過していません。今回は完全食誕生の背景を見ていきましょう!
ロブ・ラインハートが考えた食事のあり方
完全食を開発したロブ・ラインハートはかつてビジネスに失敗し困窮した生活を送っていました。どれだけお金に困っていても生きるためには食事をしなければならず、毎日の食費をいかに切り詰めるかが悩みの種になる一方で、調理から片付けまで手間もかかる食事そのものにもストレスを感じていたのです。
忙しいビジネスマンなら誰もが思っている事かもしれないね。
あらゆる食事やサプリメントを試していくうちに、彼は『生命の維持に必要なのはパンや牛乳といった食物ではなく、その中に含まれるアミノ酸やタンパク質なのだ』という発想に至ります。ビタミンCやカルシウムがサプリメントとして単独で販売されているほどですから、そうした生命の維持に必要な”化学成分”を集め適切な量だけ混ぜ合わせて直接摂取すれば、食物を介した摂取、つまり従来の食事から開放されると考えたのです。
現在の食事は非効率なもの?
私達が自宅で食事を摂るとき、決まって調理という手順をとらなければなりません。調理をするには食材を買い、皮を剥いたり食べやすい大きさに切ってからコンロや電子レンジで熱を加えるなど様々な手順を取る必要があります。それが面倒であればインスタント食品や外食に頼るという手もありますが、それらも結局『調理の大半を誰かに委託している』に過ぎません。
誰かに委託するのであれば、結局食費がかさんじゃうね。
またバランスの取れた健康的な食事であればあるほど必要な食材や品数は増えていきます。食材を保管する手間や衛生的なリスクも発生します。そうした食事にかかる金銭的・時間的なコストを考えれば、他の事に時間を割きたい現代人にとっては決して効率的であるとは言えないでしょう。
食事はお金をかけても必ず健康的だとは言えないからね…。バランスのとれた食事ってのは難しい。
ロブ・ラインハートはこうした現在の食事を可能な限り効率的に、そして人が健康的であるための生活ができる食品の開発を自らする決心をしました。
目標額10万ドルをわずか2時間で目標達成
大きな発見に至ったラインハートは手掛けていたビジネスを中止し、完全食の開発に着手しました。そしてインターネット上のクラウドファンディングで出資を募ったところ、なんと開始から2時間で10万ドルを達成したのです。これは当初1ヶ月間かけて達成する予定だった金額でした。
話題が話題を呼び、最終的には15万6000ドル以上が集まりました。また、注文が殺到したために生産が追いつかなくなった彼はさらに企業から150万ドルの資金調達に成功します。完全食がいかに人々の関心を集めたかが分かります。
完全食は食べものIT革命
ソイレントが発売されて以降、これまで数多くの完全食が世に送り出されてきました。完全食はそれだけ多くの企業や人々を引き付ける魅力的な食品だったのです。
最初の完全食であるソイレントも今日に至るまで様々なバリエーションが展開されています。完全食が今後更に増えていくであろうことは言うまでもありません。
栄養の摂取を短時間で行うというハードルの高さがあった現代
サプリメントが普及した現代では、不足している栄養素を補うことそのものは非常に簡単です。しかし『生命に必要な栄養素を全てサプリメントで補えるか』という疑問には誰しもが否定的であると言えるでしょう。
食事にかける手間や時間を減らすほど、精神や健康に影響が及ぶとされてきました。理論的には、これまでのサプリメントを組み合わせれば決して不可能なことではありません。それでも、日常生活を維持できるだけの種類と量を考え揃えることはあまりにも非効率的でコストもかさむことから現実的ではありませんでした。
サプリメントは高いし、それを摂取するための正しい知識が必要なんだよね、最近はコンビニでも売っているから身近にはなってきたけど…。
完全食は食べものIT革命
ロブ・ラインハートは”これ一つで生命活動を維持できる食品”というまさにSFの世界でしか描かれてこなかった夢のような理論を現実のものとしました。これを契機として現在では世界中で様々な完全食の開発競争が行われています。
もちろん日本でも食品企業が率先して開発を進めており、食への関心が高い国民性と技術力で今後世界をリードしていくのではないかと期待が高まっています。食品とテクノロジーの融合によるムーブメントはまさに2020年代の新たなIT革命として今後私達の食事に、ひいては生活に大きく関わってくるかもしれません。
完全食の誕生は世界に何をもたらすのか
これまで不可能とされてきた完全食が実現されたことで、様々な議論が巻き起こりました。健康への影響は本当に無いのか、食事の意義やこれからの食事のあり方についてなど、私達が考えなくてはならない新たな食への課題も見えてきました。
本来の食事の意味を考えることになった世界
健康の維持に必要な栄養を一度に摂取することが可能であるならば、これまでの食事をどう考えていけばよいのでしょうか。
食物は天候や災害により価格や供給量が変動しますし、一方で大量生産の中で売れ残ったり傷がついているという理由で無駄に食べ物が廃棄されてしまうフードロス問題も深刻化しています。ただ単純に栄養を摂取するだけならば、倫理的側面からも食物によって得る必要はないのかもしれません。もちろん完全食の原材料が食物であるケースが大半ですが、加工によって無駄なく食物を使うことが出来るという利点があります。
人口が増え続けている現在の世界ではフードロスの問題は極めて重要です。完全食は必要な食糧を世界に再分配できる可能性があります。
しかし、これまでの食事と完全食で最も大きく違う点は味覚や食感、見た目と言った”食事の楽しみ”の有無です。その点で言えば、特に味や食感に改良の余地のある完全食はまだまだ現在の食事に遠く及びません。利便性に対しそれほど普及していると感じられない理由としてはやはり人々の”食の楽しみ”への意識が大きいと考えられます。
まあ、確かに美味しいものはみんな興味があるよね。
食事の役割が変わる
ロブ・ラインハート自身も完全食の存在が必ずしもこれまでの食事を否定するものではないと考えています。完全食はあくまで健康な生活を送るための基礎となる食品であり、それ以外の食品も楽しむためのものとしてこれからも存在するでしょう。調理や食事を介して誰かとコミュニケーションをとることができるのは現在の食事ならではです。
完全食の利点は、忙しさや金銭面から疎かになりがちだった食事の代替とすることでインスタント食品と同程度の手間でありながらきちんと栄養バランスの取れた健康的な食事へと変えることが可能な点にあります。健康は生活の質に直結します。その基礎部分を完全食で底上げすることで、よりよい社会を築くことが出来るのです。
忙しいとどうしてもカップラーメンとかインスタント食品を食べがちだよね。これを完全食に置き換えれば最適なのかも。
これまでの食事と、完全食。どちらか一方だけという考え方ではなく、両方の利点と欠点を補い合い新しい食文化を作り上げていくことが最も実現可能な未来であると言えるでしょう。
まとめ
完全食の開発の経緯から現在に至るまでの歴史は、私達のこれまでの、そしてこれからの食事のあり方について考えさせられるものでした。文化交流や技術の向上により食の多様性が増大する中で、完全食はまだその選択肢のうちの一つとしての規模でしかありません。しかしながら、そこに秘められたポテンシャルは未知数です。今後ますます発展するであろう完全食から目が離せません。
次回も完全食をテーマにお伝えします!ソイレントについてもっと詳しく知りたい人はこちらの記事も読んでみてください!
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